うつ病の薬物療法を行うときには、病状と薬の量が必ずしも相関しないという点に注意する必要があります。
つまり、抑うつ症状が軽いからといって、抗うつ薬が少なくて済むというわけではありません。
むしろ、少ない量を漫然と服用し続けることによって、うつ病が慢性化することもあり得るのです。
アメリカの精神科医のコクシスたちは、慢性の「軽い」うつ病である、気分変調性障害の患者を対象にして、三環系抗うつ薬のイミプラミン(薬品名トフラニール)とまったく薬効のないプラセボ(偽薬)を、どちらかわからないようにして飲んでもらい、どの程度の人のうつ症状が改善するかという二重盲検試験(くじ引き試験)を行った結果を発表しています。
それによると、プラセボを飲んでいた人たちの改善率が13%だったのに対して、イミプラミンを100rから300rにまで増量したグループでは、59%の人が改善。
しかも、イミプラミンをそれだけ多く飲んでいた人たちの1年後の経過を見たところ、89%の改善率が認められたといいます。
イミプラミンの場合、日本で一般的に使われている量はだいたい50mgから150mg位までですから、この研究で使われた300rという量は、かなり多いといえます。
つまり、うつ病の薬物治療では、十分な量の抗うつ薬を使う必要があることが、この研究からもわかると思います。